かとみさんの「みはしのあんみつ愛」から学ぶ推しの推し方。
かとみさんという人がいる。「みはしのあんみつ」が好きすぎる人だ。
かとみさんは「東京別視点ガイド」というウェブメディアで、東京にある「みはし」というあんみつ屋のあんみつについての記事を大量に書いている。
1記事でも読んでもらえればわかるが、あんみつに対する愛がすごい。
これらは「みはしのあんみつ推し」の人が推しを語る記事と言える。
そう、かとみさんの「みはしのあんみつ」紹介記事からは「推しを人に勧める」時に大切なことが詰まっているのだ。
情熱と冷静さのバランス
まず「みはしのあんみつ」に関するかとみさんの1本目の記事を読んでみよう。
少なくとも週1ペース、土日のどちらかはあんみつを食べないと落ち着かない。
あんみつを食べに行く為に「用事がある」と言って誘いを断ることもある。すみません。
もうあんみつ愛に溢れている。
そして愛が溢れているのにも関わらず、初心者にも分かりやすく「推しの魅力」を丁寧に説明できている。
愛が強すぎると時に冷静さを失い、むしろ本人の情熱しか伝わらない文章になってしまうことも多い中で、かとみさんの文章はきちんと「推しの魅力」が伝わるのだ。
基本から順番に語りつつも、本当は推しについて余すところなく全てを語りたいという情熱も垣間見える文章構成。
1記事目から素晴らしいプレゼンである。
「ない」と言い切る勇気と寄り添う姿勢
そして次に紹介したいのはこの記事だ。
「初めての人におすすめする」という視点でどれを選ぶか考える…これは何を紹介するにしても大変難しい問題である。
私も推しの出演作で、初めての人にどれをおすすめするべきか、と問われたらめちゃくちゃ悩む。選べないのだ。
かとみさんはそんな難問にこのような答えを出した。
みなさんはもうお分かりだろうか。
私はついに分かってしまった。初めてにおすすめするべきあんみつが。
答えは「ない」。共通点などなかったのだ。人の心は十人十色。求めるあんみつもバラバラだ。それが答えである。
なんて正しい回答だ。
初心者におすすめすべき絶対の入り口…そんなものは「ない」と言い切る勇気。
なんだってそうだ。人それぞれに好みがあり、合う作品は違う。
「誰にでも絶対おすすめできる」などという万能のメニューはないのだ。
しかしそんな中でも、かとみさんは「YES/NOチャート」によってその人に合ったおすすめを導き出そうという努力をしている。
はっきり言ってこれはかなりの手間のはずだ。
なんたって答えが1〜17まである。多すぎる。
しかしそんな「初めて推しと出会う人」に徹底的に寄り添おうという姿勢。
そして推しのことをできる限り知り尽くし、案内しようという情熱。
それはもう、推しへの愛がなせる技ではないか。
苦手なものがある人への優しさ
ところで私はアズキの餡子が苦手である。
なので和菓子屋や甘味処にはあまり縁がなく、あんみつを食べた記憶も殆どない。
缶詰のみつまめ程度はあるが、わざわざ「店であんみつやみつまめを食べよう」となったことがないのである。
しかし、かとみさんのあまりの情熱、みはし愛を知ったことで、自分も「みはしのあんみつ」を食べてみたいという気持ちが湧いてきた。
なんとかとみさんの「あんみつチャート」には、餡子が苦手な人のための選択肢も豊富に用意されているのだ。
「みつまめ」という選択肢もまた「みはしのあんみつ」の一つであるという広い心…それは推しを布教するという点でも大変見習うべきポイントではないかと思う。
間口を広く、苦手なものがある人にも「これなら」と思わせる選択肢を用意する。
そんな優しさは推しをなるべく広く普及させるためにはとても大切なことだ。
初めてのみはし
そして先日、私はついに初めての「みはし」に行ってきた。
東京駅一番街の「みはし」である。
新幹線に乗ったついでに寄れる、地方民にとってはとてもアクセスの良い「みはし」だ。
時間は午前11時半。店内は空席もあるが、半分以上は埋まっていた。この時間からあんみつを食べようという人は思ったより多いらしい。
店内を見渡すと、団体客もいたが女性一人客が多い。一人客はみんな黙々とあんみつを食べている。
私も一人客なのでなんとなく仲間意識が生まれた。
予習は完璧だった。
まずはベーシックに「フルーツクリームみつまめ」を注文すると決めていた。
店員さんに注文を伝える。注文が通る先の厨房はなぜか煌々と光り輝いていた。あの光の厨房であんみつは作られているのか。
予習の通り、注文から程なくして「フルーツクリームみつまめ」はやってきた。
なるほど、フルーツがいっぱいのっている。これは贅沢だ。
まず分厚いキウイが3切れもある。キウイ好きとしてはめちゃくちゃ嬉しい。
バナナも良いバナナだし、真ん中に一粒あるイチゴは特別感がある。
干し杏はみっしりと濃いのが3枚。
ソフトクリームも寒天やフルーツと合わせてちょうど良い濃さだし、黒蜜の風味も素晴らしい。
求肥のもちもち感も豆の塩気もちょうどいい。
とにかく要素がたくさんあるのにバランスが良いのだ。
うめえ…
黙々と食べてお茶を飲む。
このお茶もうまい。しかも隙あらば店員さんがきて注いでくれる。
昼時の「みはし」はガラガラになることもないが全席埋まるということもなさそうで、ちょうど良いのんびり加減だった。
隣では東北訛りの女性二人客が何か喋っていたが、フランス語みたいな響きが妙に心地よく感じた。フランスにも東北にも縁は全くない。ただみつまめが美味くて機嫌が良かったのだ。
餡子が苦手だと和菓子屋や甘味処はこれまで休憩の選択肢にも入らない場所だった。
しかしここならまた来たい。「みはし」なら次もまた…
そんな思いを胸に幸せな気持ちで店を出て、私は推しの立つ舞台を観に劇場へ向かった。
「みはし」を推したいし、「みはし」のように推したい
そんな初「みはし」を体験した上で、私も和菓子・甘味処部門では「みはし」を推したいと心に決めた。
「みはし」の存在を教えてくれたかとみさんに感謝したい。
そしてかとみさんが「みはし」を推すように、私も俳優の推しを推したい。
私の推している俳優・味方良介さんは正直「みはしのあんみつ」ほどには万人受けするタイプではないのではないか、とも思う。
あんみつに例えると、多分クリームやフルーツより干し杏と白玉ばかりが山ほどのってるような感じの、ちょっと極端なやつじゃないかと思う時もある。
でも人の好みは千差万別で、そういうあんみつを求める人も確かにいるのだ。
推しのような味が好きな人にたくさん出会えるといいな、と思う。
まずはチャイコフスキーが鳴り響く捜査室、新宿と大阪に現れる「春の熱海」へ
一人でも多く足を運んでもらえたらいいな。
無理にとは言わないけれど、もしも少しでも興味があって、予定が合えばでいいので。
東京は完売とか言ってるけど平日はまだあるし、追加公演もあるし、大阪はまだ全然チケット売ってるので。
台詞と芝居の洪水に、一緒に溺れに行きませんか?
その後ぜひ一緒にみはしであんみつを食べましょう。
胸がいっぱいでもきっと食べれるから。