狂気の中で「弱さ」が花開く 舞台「奇子」大阪公演感想
いやーかなり今更になっちゃいましたが、舞台「奇子」大阪公演も観劇してきました〜
水戸プレビュー公演の感想はこちら↓
水戸公演と比べるとやっぱり全体に一体感が出てがっちり固まって、大千秋楽にふさわしい公演が観れた!という感じでした。
みなさん感想で書かれてますが女優陣が素晴らしかったですね…そしてベテラン勢も若手勢も主演の五関さんも素晴らしかった…
再演あればぜひ観たい!という気持ちもありますが、中屋敷さん演出で同カンパニーの新作が観られるなら観てみたいという気持ちも。
中屋敷さんなら同じ役者を色んなパターンで活かした作品を観させてくれそう、という期待を込めて、ぜひパルコさんよろしくおねがいします…!
以下、いつもどおり味方さん演じる役(波奈夫くん)中心なレポです。
弱さがより前面に出た波奈夫
水戸と比べて、波奈夫は弱くなっていました。
水戸公演の波奈夫は基本的に「強い好青年」で、最後の最後で少し「子供っぽさ」という意味で弱さが見える…というバランスでした。
「強い」と言ってもそれは若さゆえというか、恐れを知らない感じの強さではありましたが、それでも「強さ」を前に出した波奈夫だったように思います。
大阪で観た波奈夫は「弱さ」に重きを置いた、俗っぽく言えば「ヘタレ」系の要素を増したキャラクターに変わっていました。
特に終盤、伺朗が死んで奇子が「伺朗兄ちゃん、死んだわ」と一言発してからの怯えよう…というかもう奇子に対して「ドン引き」と言っていいほどの引きっぷりを見せた辺りからがもう凄い。
…まあその前から、奇子にナイフを突き付ける仁朗に気付くのが完全にワンテンポ遅い上に一番でけえ声で驚いてる辺りから、だいぶヘタレ男ではあるんですけど…!(本当そういうとこだぞ波奈夫)
あと怪我人をやたらペタペタ触るとこも…痛がってるから!自分が心配だからって意味なく触るのやめてあげて!赤ちゃんか!!
詳しくは後述しますが、ヘタレ要素が盛り盛りになったおかげで初日とは全く違う「下田波奈夫」になってるんですよね。
味方さんが以前演じた役で例えると…
初日の波奈夫が『Teke Me Out』のキッピー・サンダーストームだとすれば、
大阪公演の波奈夫は…『世界の終わりに君を乞う』の億先生や『ラブ・レターズ』のアンディーに、『ちっちゃな英雄』のジョージが怯えてる時や『MOJO』のスキニーみたいなヘタレ成分を増し増しにした感じ…?うーん逆にわかりにくいか…
そうしたヘタレ・弱々感を前に出したことでどんな効果があったかというと、「最期の台詞」がより自然に、深く染みるようになったわけです。
初日は「強さ」と最期の「弱さ」がギャップとして際立つ、という構成でしたが、
大阪では「弱さ」が最期に至るまでの自然な流れとして増していった末のピークにラストシーンが来る。
それぞれどちらも面白い構成でしたが、私は味方さんが波奈夫を演じる中で最後の答えに「弱さ」を最前面へ持ってきたのが面白いなと思っています。
この辺り、まだもうちょっと考えたいな〜(そんなこと言ってるから記事が遅くなるのだ…)
「はわわふえぇ」系な終盤
波奈夫の「ヘタレ要素」として一番インパクトがあったのが終盤「天外一族・自滅殺し合いの場」(勝手に命名)ですね…
全員が窖に閉じ込められている中で、これまでの恨みやらなんやらがあるにしても無駄な刺し合い殺し合い…都会でぬくぬく愛されて育っただろう波奈夫くんからしたら全く理解できない状況でしょう。
そもそも波奈夫くん、狂気に対する耐性がまるで無い。
(平常時では)気が狂ったとしか思えないような殺し合いを目の当たりにして、波奈夫くんは「はぇ…」とか「ひぇ…」とか「ほぁ…」みたいな喘ぎ声小さな悲鳴をあげ続けるだけ。
争いを止めることも身を隠すこともできず腰を抜かしたまま「はわわふえぇ」状態の波奈夫くん…そういうとこ…そういうとこよ…
身の上話は真剣に聞いているが…本質的な理解は?
育ちからして彼らの狂気が「理解できない」とはいえ…波奈夫くんは一応、それまでに彼らの生い立ちや殺すほどの恨みに至る人生の流れ、身の上話を聞いています。
波奈夫は表情豊かに頷いたり共感したり同情しながら、真剣に耳を傾けていました。
そう、洗いざらい、全て聞いているはずなんです。
特に志子が「恋人を殺した相手を心から憎んでいる」とか、もう分かりやすく説明されていました。
しかし波奈夫はそれでも、志子が仁朗を刺した瞬間に「なんで…?」と言ってしまうのです。
あれだけ真剣に聞いていながら、本質的に彼ら、彼女らの心情を「理解」はできていない。おそらく「できない」。
それが分かってしまう…あの一言が本当に…本当に波奈夫ってやつは…!
「見えて」しまった動揺
窖の生き残りがどんどん減っていって、奇子と波奈夫だけが残ったシーンがまた良かったです。
波奈夫ではなく、奇子はその場にいないはずのお涼と楽しげに会話します。
他愛もない会話。その相手が見えなければまだ、波奈夫は正気でいられたのかも知れません。
しかし波奈夫には奇子の話し相手が、お涼が見えてしまった。
驚き動揺しながらも、もう波奈夫は「正気」であったころのように腰を抜かして地面に這いつくばってはいません。
天外家の狂気に取り込まれてしまった波奈夫は、その後奇子が眠ってしまったことでさらなる孤独とも闘わなくてはならなかった。
それでも…窖が掘り起こされるまではなんとか生きていて、最期の一言を残すことができた波奈夫はただ弱いだけでなかった、「強い」人間だったとも言えるのかも。
弱さの中の強さ、強さの中の弱さ…そんな相反する両面を感じられる、見ていてとても面白い役でした。
尻サービスタイムはサービスじゃなかったらしい
えーっとこれは本当に余談になっちゃうんですが
あの、波奈夫くん、すごい尻タイムがあったんですよ。数分間、主に客席上手方向に向かって…薄いズボン越しに丸いおしりを見せつけてくれるような…
いや本筋としては主役の仁朗が死に際で、奇子、俺が死んだら俺の肉を食え…とか言ってる重要なシーンだったと思うんですけど、どうにも尻が気になって…
仁朗より圧倒的に波奈夫のほうが(尻まわり含め)肉が多い…残酷なまでの可食部の差…とか思っちゃって…
あっちょっと動いた!尻終わるかな?と思ったらちょっと違う角度で更に尻タイム継続!これはこれで丸みのエッジがよく見える!みたいな…
照明もまたいい具合の半逆光で柔らかな丸みが繊細に浮かび上がる尻照明でね…!?
これはあえてなのか?あえてなら何故…何故この大事なシーンで波奈夫の尻を…!?
と毎回めちゃくちゃ動揺してたんですけど、耐えきれずに千秋楽後の深夜に放送された中屋敷さんのツイキャスで聞いちゃったんです。あれどういう意図だったんですか?って。
そしたら全く意図的ではなかったらしくてですね?
なんか本当すみません…尻ばっか見て尻照明とか言っちゃって申し訳ない…だってあんな絶妙な尻が意図的でないなんて信じられないじゃないですか!
舞台の魔物って怖いですね。いや魔物のせいにするのも…どうなのかとは思いますが…魔物さんが尻好きみたいな言いがかりしてごめんなさい…
初日と楽で観劇できた幸運
尻のことはさておいて、今回「奇子」では水戸・大阪で初日と千秋楽が観劇できたのはとても良い経験ができて本当によかったです!
私にとってはなかなかできないことなので…運良く観れてよかった…
欲を言えばやっぱり紀伊國屋ホールでも観たかった!絶対良かっただろうことは分かりきっているので…!
いやでも贅沢言っちゃいけませんね。最初と最後が観れただけで本当に贅沢でした。
こうしてひとつの演目・ひとつの役であっても、最初と最後で全く違った姿を見せてくれる推しが本当に誇らしいです。
次のハムレットも楽しみ…と言いたいところなんですが、チケットがまだないんですよね!
一般発売終わってるんですが…いやーまあ取れなかった…流石はSexy Zone…
大阪公演どの回でもなんとかして行くので、いつでも(定価+手数料で)*1お譲りいただける方大募集中です〜!
まあ難しいと思うので、当日券で頑張るつもりですが!
フォーティンブラス、出番少ないのは分かりきってるんですが少なくてもきっと良い芝居になるだろうことも分かるし一回は観たいな…本当…がんばります…
あ、それとですね、最近うっかり全然宣伝できてなくて結構ピンチなんですがこういう企画もあります!
各自の推しを自慢する大会みたいな感じです。見学のみも大歓迎!
正直全然応募来てないので!こじんまりとやることになると思います!気軽にお申し込みください〜!!
*1:宗教上の理由により高額転売はお断りいたします