春、神棚から降りて夏が来る 熱海殺人事件2019 大阪公演感想
「熱海殺人事件 LAST GENERATION 46」大阪公演を観劇してきました!
(いつの間にやらずいぶん日数が経過してしまった…)
初日の感想はもう「貫禄…貫禄がすごいというかもはや存在が貫禄…」って感じで、流石に3年やってると3年分の重みが出るな…と思いました。
さて、以下はいつものようにネタバレしかない(熱海にネタバレもへったくれもあるかという感じもありますが、今年は結構変わったとこもある)ので、未見の方は注意してくださいね。
いやー来ちゃいましたね大阪に!熱海が!
RUP制作の「熱海」としては2013年以来、推しが伝兵衛を演じだしてからは初の大阪公演ということで…
私の地元関西に来てくれることは素直にとても有難いです。交通費が浮く!
劇場は2月にオープンしたばかりの「COOL JAPAN PARK OSAKA」のTT(大中小の中)ホールという、まあ上演作品ラインナップ見たらほぼほぼ吉本の劇場では?って感じの劇場で…
これ大阪公演あるの完全に石田さんのお陰やな…と察する感じありますね。石田さんありがとう…
で、感謝は述べたのでこっから「まあでも大阪って熱海の上演にあんま向いてないよね…」と感じたところをちょっとだけ書いときたいなと。
いや向いてない作品をわざわざ上演してくれたことは本当ありがたいです。
「熱海」を大阪で上演する難しさ
この作品が大阪での上演に向いてないんだろーなーと思う理由は大きく2つあります。
1.地名や店名など「関東ローカル」な話題が多い
まずね、「熱海」って地名すら多分関西じゃ今はマイナーなんだと思うんですよ。
わざわざ関西から行かないもんね、熱海まで…
「湘南」「鎌倉」が良くてなぜ「熱海」は駄目なのか?
それは関西で言えばどこになるのか?(そもそも関西、海水浴できるオシャレな海って少なくない?有名な泳げる海って須磨か白浜くらい?)
「ルノアール」もないし、「道玄坂」も「板橋」もどんな場所だか分からない、富士山すら実際見たことない人も結構いるかもしれない。
そんな関西人に「ピンとこない」固有名詞が詰まってる上に、時代も違うからそっちの面で分からない単語もいっぱい出てくるはずで…
まず話を理解するところからかなりハードル高いですよ。
2.関西的な価値観があえて外されている
…んじゃないかなーと思うんです。
まず登場人物の設定に関西出身者が居ません。(おそらく)関東、中部、北陸、九州。
何故かと考えると、私は多分、作者がこの話で語りたい構造にとって「関西的な価値観」が余計なものだからじゃないかと思います。
「熱海」は
- 権力と庶民(百姓)
- 都会(東京)と田舎(地方)
といった対立構造を基本としています。
都会(東京)的な価値観と「田舎の百姓」の関係を中心に描く作品だと感じます。
(「新幕末」でもそういう感じだったので、作者はそこにこだわりがあったんだろうな)
ですが関西、特に大阪人にとっては「農民・百姓」的な価値観ではなく「商人」的な価値観が中心です。
大阪の商人的価値観において「東京」はさほど憧れでもなく(むしろ嫌われ)、「百姓」は取引相手・生産者であり、どちらも「自分ごと」というよりは少し遠い存在になるのではないかと思います。
そしてそんな「商」の価値観が「農」と「東京」の対立に入ってくると、混ぜっ返されて話がややこしくなります。作者の語りたい「百姓・田舎の貧困」や「都会の虚しさ・悲しさ」みたいなところからピントがずれてしまうのです。
よって「関西的・商人的な価値観」はこの作品では排除されています。
だからもう…特に生粋の大阪商人の方なんかにはめちゃくちゃ共感しづらい話なんじゃないかと思います、私は…(多分、他人事として面白がることはできるけどね)
そんな大阪でどうやって「ウケる」か
っていったら、やっぱり「笑い」しかないわけです。
まあ毎年「熱海」にコメディ的なパートはあるんですが、今回は石田さんがめっちゃ頑張ったんじゃないかと思います。
関西に乗り込むために、熱海でできる限りのネタを作ってくださったんだな…という…
あえての「しょうもなさ」とかね…大阪でウケるギリギリの「しょうもなさ」を狙って作ってる感が…思い返すと「あーすげえな」ってなりますね…
色んな意味で石田さんがいなかったら大阪公演できなかっただろうなーと思います。感謝しかない。
あとはもう貫禄ですね。貫禄の迫力。「なんかすげえもん見たな」感。
3年目で大阪へ上陸したことの意味というか、この迫力で押し切られたら話わからんくても満足できるやろ、というか…
みんな好きだからね、迫力ある何か…おばちゃんとか…
と、まあ大体「演目自体の大阪との相性の悪さ」「そこを乗り越えて上演したのはえらい」ってとこを書いたので、あとは今年の伝兵衛ちゃんの話をしますね。
(そういうブログなので…今泉ちゃんのファンの方もし読んでたら期待しないでね!ごめんね!)
3年目の伝兵衛は神棚から降りた
3年目の今年、味方良介が演じる木村伝兵衛は大きく変化しました。
一番大きな変化は、今年からの追加場面(結婚式の挨拶という体で水野との関係を話すミュージカル調のシーン)によるものですね。
「水野と一緒に遊ぶ伝兵衛」から「水野に遊ばれる(こともある)伝兵衛」に
追加場面で語られる水野との関係は「ラブホテルに行ったが、結局性的関係には至らなかった」というものです。
このシーンで伝兵衛は様々な失敗をし、とても情けない男のように描かれます。
しかも水野は「自分で2時間分のホテル代を支払った上で、1時間50分一人で風呂に入っていた」のです。もう完全に伝兵衛で遊んでいます。
もちろん二人がどこまで本当のことを語っているかは不明です。全部ふざけているだけという見方もできます。
しかし表面上だけでも「水野に遊ばれる情けない伝兵衛」という描写はこれまでの2年では無かったもので、とても新鮮に写りました。
「神棚にいる神」から「在野の神」「俗の神」へ
これまでの「木村伝兵衛」の印象は「捜査室の神様」でした。
それもかなり高いところ、作り付けた神棚の上におわす決して手の届かない遠い神様です。
しかし今年の伝兵衛は上記シーンの追加もあり、神棚から動かない神ではなくなりました。
私は初見後、直感的に「ストリッパー」という単語が浮かんだのですが、つまりは「俗」の世界へ降りてきた神としての木村伝兵衛、というのが今年の印象です。
神棚から降りたことによって「神聖さ」が薄れ、弱い存在になったのではないか、と疑われるかもしれません。
しかしあえて「俗」の中に降りたからこその力というものもあるのではないかと私は思います。
「俗」の中にあっても触れられない、同じ高さにあるからこそ異質さ・異様さがより見えてくる感覚。
「在野の神」という形がより現代においてリアルな「神」として成立できる一つの方法ではないかとも思いました。
結局現代の神は「2chで見た」「ニコニコ動画で見た」「Twitterで見た」の流れにこそあるのです、多分。
歌う伝兵衛 JALで飛んで夏が来る
いやしかし今年の伝兵衛ちゃんは歌いますね〜!
結局水野より歌ってませんか?(毎年歌ってるとこ含むと…)
追加シーンのミュージカルもいいですが、もうね、「ふたりの愛ランド」がめっちゃ楽しくてね…!
二番から始まるから最初は2回目のサビまでなんの曲かさっぱり思い出せなかったですが!なんで二番からなのか。
調べたらこの曲JALのCMソングだったんですね。「YES!JAL!」の伏線じゃん!
振り付けがとにかくダサかわいくて良いですよね…ダサいけどかわいい…ココナッツ…
デュエットで推しは当然チャゲパートなんですが、ソロパート声高っ!ってなりますね。元曲が高いんですが、推し高い声出やすいから大正解。
毎度ですがハモってても目立つ声だなぁ…人と混ざりにくい声質は良いのか悪いのか…ファンとしては聞き取りやすくて嬉しいけど…!
あと歌とセリフの声質が近いというか、地続きの声で歌えるのが良いなといつも思います。
結局あんま考えずに声と芝居を浴びに行くのが一番楽しい
毎度いろいろ書いちゃいますけど、やっぱあんま考えずに味方良介という化物級の喉を持つ役者から発せられる声を浴びに行くのが楽しい演目だな…とも思いますね。
とにかく声が気持ちいいんだよなー…日光浴とか森林浴みたいな感じで「芝居浴」って感じがします。
もう「ちょっとひとっ風呂浴びに行くか」くらいのテンションで行くのがいいんじゃないかな。
結局今週末に東京公演も観に行く予定なので、また浴びれるのが楽しみです!
ついでに菊も浴びたいな!浴びれるかな…?(席覚えてない)