「世界の終わりに君を乞う。」感想・考察などの話。
音劇「世界の終わりに君を乞う。」12月8日・9日に観劇してきました!
以下、いつも通り全部完全にネタバレです!!
さて色々書きたいことはあるんですがざっくり駆け足な感じで記録しておきたいと思います!
思いついたらまた書き足すかも?
物語
「銀河鉄道の夜」「鏡の国のアリス」「不思議の国のアリス」の3作をモチーフとして、ある列車脱線事故の被害者を中心とした物語が描かれる…っていうと、なんとなく「アリスとか銀河鉄道とかみんな好きでしょ?」みたいなモチーフ選びかとつい疑ってかかっちゃいますが、このモチーフの使い方がまあ上手い。本当に好きで選んだんだろうな。
そして近年起こった、多くの死者が出た列車脱線事故といえば…ある年齢以上の人はだいたい思い出せるだろうあの事故がまるっきりモデルなので、まあ無理な人は無理だろうな、とも思います。台本には路線の名前もそのまま書いてあるしね。
私は「大事故」というのはそれに遭った側にとって、ある意味で震災などの「災害」と近い部分があるんじゃないか、と思っていて、そうした感覚で事故を捉えた作品のように思いました。
この、今作の作者であり演出家である元吉庸泰さんのあとがきブログを読んで改めて思ったんですが、主人公の死、そして生き残ってしまった那由多のシーンについて
なんの希望もない。なんの絶望もない。
と表現できるのが、誠実だなと思います。
あとがきもそうですが、作品からもどこか「(事故や災害による)生・死は偶然であり、理由などない」という思想が感じられて、そこに共感できるな、と。
生き残ったこと、死んでしまったことに無理やり理由をつけないというのが、生死に関して誠実であるということなんじゃないか、と時々思います。
みんなすぐ理由つけて安心したくなっちゃうんですけどね。
主人公を含め多くの登場人物が「既に死んでいた」という話なので、どちらかと言えば物語の中心は死者にある話だと思います。
この点については、私個人としては死者より生者が中心の話の方が好きだな、とは思ったり。
多くの登場人物が既に「死者」である話の中で、事故というひとつの「世界の終わり」を通り抜けて、軽傷で生き残ったのが味方良介(推し)演じる若き精神科医の億宗太郎。
私こういう「生き残っちゃった人」に思い入れちゃうというか、好きなんですよねー。
自分が特に被害なく生き残っちゃった側だからなんですけど。まあ私の場合、物心つくかつかないかみたいな年齢だったので、億先生ほど深刻な感じにはなりようがなかったんですが…
ある日から「世界の終わりのよう」になった街で育って、でもどんどん街は綺麗になっていって今は跡形もなく綺麗な街に住んでいて。不便なのは、たまにニュースや物語で「世界の終わりのよう」な風景をみると「恐ろしいな」と思うと同時にどこか「懐かしいな」という気持ちがあって、それが不謹慎で後ろめたく思うくらいです。
今回も物語への悲しみや感動と同時に、心の片隅で「あーこういう音を、景色を、私は知ってるな、懐かしいな」という気持ちがあって、それが流した涙に少し混じりました。
生き残っちゃった、生きてくしかない側の話、もっと観たかったなー。
すごく良くできた、いい物語だと思うのですが、話として一番のツッコミどころもまた億宗太郎ですね!
いやもう…これまで自殺未遂繰り返してきたような患者をその日は状態が良かったからって屋上に連れて行かないで…!?そんで目、離さないで…!?
自分が病んじゃうのはまあ…仕方ないけど…仕方ないけども…!!
真面目だし一生懸命だと思うけど、多分精神科医…向いてないんじゃないかな…とつい思ってしまう、そんな億先生…でも好き…
出演者など
まず主人公の市瀬一葉を演じる黒沢ともよさん、すごい女優さんでした…!お芝居も歌も素晴らしいな…!「声優さん」「子役から舞台に立ってる」という前情報はあったのですが、想像以上に素晴らしい女優さんでした。
「恋ブロ」ではよく拝見していた法月康平さんはお芝居では初。歌い出しから「あー法月くんだ…!」って感じの、予想を裏切らない上手な歌声でした。お芝居も良かった!
推しの大親友である木戸邑弥くん…いやもう、王子様だ…!白の騎士似合いすぎる…!!スパダリぢからが…つよい…まぶしい…惚れ直すわ…
そして推し、味方良介さん。相変わらず声が良い。
歌も良い。今回の曲はどれも本当に推しによく似合ってて良かったです!というか全員似合ってて無理がない楽曲だなーという感じがした。
特に「M14 境界線」が好き…推しのために作ってくださったんじゃないかって感じの曲調…!バックの映像が音声認識でリアルタイムだったと知って驚き。映像も本当に上手で使い方にセンスがあって良かったなぁ…
日替わりネタも面白くて可愛い!「作家」「サッカー」とか「ドロップでよく最後まで残っちゃうやつは?」「ハッカ!」とか、言葉遊び系のネタが多くて可愛かったです。
「ひたすら笑い袋みたいに笑い続ける」のは「リメンバーミー」の梶原善さんがやってたやつ!!ってなったけど!可愛かった!
あと「金◯さん」…言い方が!あらうっかり感!そんなド天然お嬢様みたいな感じで下ネタを!もう!!
考察
ここからは観てから色々考えたこととかのメモ。
「旅の道連れ」について
「那由多によく似た」とあるので那由多の分身的存在でもあるのかなと思うけど、観てた時の感覚としては「死」の役割が強いように感じた。
理由としては
- ずっと一葉に手を伸ばしているが、あるシーンまで手を握ることはない
- 一葉本人が自らの死に気づいてから初めて一葉の手を取る
- 途中、一葉を自殺へ誘導するような役割(影)を演じる
- 最後のシーンでは、倒れた(死んでいる)一葉を優しく抱き起こす
というあたりで「死」っぽい役割だなーと思った。
一葉がいる世界について
ベースとしては那由多の夢かな、と思う。
ただの夢ではなく、那由多の自殺未遂によって出現した生と死の間の時空。
那由多ひとりの夢ではなく、一葉などの死者や、億や七緒のような生者の夢も混じっている。
死者も生者も迷い込む場所。それは道連れによって?とも思ったけど、保留。
白の女王
あとがきで書かれてた、一葉と億先生の会話が「鏡の国のアリス」のアリスと白の女王の会話のオマージュになってるって話、改めて読んでみると確かに…!ってなって面白かった。
Through the Looking Glass: Japanese
「アルバイトしませんか?」が唐突だなーとは思ってたんだよなー。でもまさか億先生が白の女王とは…白の女王は「バタつきパン、バタつきパン」って呟いてるんですね。「鏡の国のアリス」に出てくる蝶々は「バタつきパン蝶」なので、さっきまで蝶々と書いて「てふてふ」だった億先生が白の女王って繋がりなのか…
本当に作品として素敵でよくできた舞台だったなーと思います。観れてよかった。
そして「きどみか」が今回ついに共演しましたね!それも本当に良かった!!
2人は絡みの多い役ではなかったですが、並んでるだけでもなんか感動というか、よかったね…!ってなりますね…
きどみか的に一番「うっ…」ってなったのはチェスの戦争シーンで、白の騎士の足を白のチェスとして支える味方さんです。
邑弥くんの足を!足を支えてる…!!右じゃなくて左足でしたが、鏡の中の世界なので…
勝手に色々重ねてジーンとしました。
お花もきどみか連名宛てでいっぱい来ててすごかったな…またいつか必ず「きどみか」に共演してほしいですね!舞台制作会社の方々、お願いします…!
今年の推しの舞台はこれで終了、ということで、来年も推しがたくさんの素敵な舞台に立つことができれば、そして私もできる限り観に行くことができれば嬉しいなと思います。
まずはなるべく健康でいられるように気をつけます!!みなさんも良いお年を!!